2023年09月19日
妲妃の作った肉餅(ハンバーグ) (画像生成AIの無断学習について)
現実は小説より奇なり。
画像生成AIが世に出てきた時、それによる雇用問題が生じたり、人間の行うアートの意義を問う論争が起きたりぐらいのオーソドックスな事は想像しましたけれども、まさか、PIXIVがAI生成イラストで埋め尽くされたり、ネット上で絵描きさんへの暴言や嫌がらせが横行したりするなどとは思いもしませんでした。
……予想よりモラルが斜め下だったよう。
ちなみに、どうも、我々絵心の無い人間(と言うとマイルドだが、要は、絵を描く努力をしてこなかった人間)に代わってAIがエロ絵を描いてくれるというような、そんないい物でもクリーンな物でも無いみたいですよ。
立場によって言っていることや重視していることの違う話題ですが、私が「なるほど」と思ったり判断の根拠にしたりしているのは、下記の動画や記事などです。
一応、紹介してみました。皆さんの方が、お詳しい? 関連事項へのリンクなども張られていますので、自分で調べたり裏を取ったりしたい方にも、オススメだと思います。
『反転アンチずんだもんが解説!~生成AIの闇に物申す~』
https://www.youtube.com/watch?v=Dpk3HmMVPDw
『ずんだもんが5分で解説!~生成AIの実態~』 (↑の簡略版です)
https://www.youtube.com/watch?v=0FPyLHppZMk
長さは一時間近くあるものの、大変分かりやすく問題が纏められている動画です。
「イラスト生成AI」の何が問題視されているのか、どうして絵描きさん達が腹を立てているのか、知らなければ、こちらが参考になると思います。
一つ一つの話題は簡潔に纏められているにも関わらず、時間が増えてしまっているということは、それだけ根が深くて影響が多岐に渡っているということなのでありましょう。
『【AIについて考えるシリーズ】技術とクリエイター【第2回】』 (シリーズ更新中)
https://www.nicovideo.jp/watch/sm42655020
生成AIについて、ご本人が調べたことを咀嚼して、動画形式で教えて下さっているシリーズです。
上にリンクを張った回では、主に、Stable Diffusion登場以降、今日に至るまでの経緯が解説されています(ただし、「つっても私は詳しく無いので、適当な所から拾ってきたネタになります」「正確性は知らんので話半分でよろしこ」とのこと)。
全体的に、話題が広くて、とても勉強になります。 m(_ _)m
『WEB+DB PRESS Vol.134 /技術評論社』
https://gihyo.jp/magazine/wdpress/archive/2023/vol134
拡散モデルという生成方式について、肯定でも否定でもなく、純粋に仕組みを解説している記事が載っています。
機械学習のさせ方ではなく、生成ボタンを押してプロンプトを送った後に、内部でどのような処理が行われているのかの説明がメインです。
技術系の雑誌だけあって、言い回しが肯定寄りに感じたりはしますが、変な暴言・煽りなどはありませんので、安心して読めると思います。
……img2imgというのは、「元絵にノイズをぶちまけた後に、そのノイズを除去して、微妙に違う絵を生成する行為」という理解でいいのかしらん? うん、それを他人の絵に対して行うのは、二重の意味で失礼だ。
『生成AIはなぜ嫌われるのか?』
https://note.com/canchanandme/n/n14741bd914a3
『AIイラストユーザーが誰も語らない「データセットの闇」と「搾取構造」』
https://note.com/canchanandme/n/n47713a6eae1a
生成AIの問題について訴えていらっしゃる方のnoteです。
機械学習に用いられたデータセットやLAION-5Bとは、どんなものなのか? ということについて、一番目のnoteの最初の方で解説されています。
二番目のnoteは、最初の警告画像がおどろおどろしいですが、データセットに関する別口のソース集のような感じです。
一番目の全体の趣旨としては、生成AIが引き起こしている問題・被害を、国内外の事例を交えて網羅的に紹介している、という感じになるのかと思います。
リアル(三次元)に対する被害も既に起きていて、最初、アニメ・ゲーム制作の効率化や二次元イラスト中心の問題だと思っていた自分の認識の甘さ、不見識を恥じるばかりです。
さて、私が何を主張した所で「DT4章、はよ書けや(プゲラ)」「何ならChatGPTで代わりに書いてやろうか?(ギャハハ)」で論破(?)されてしまうので、あまり語るつもりは無いのですが、おそらく知識が無いが故に無神経な言動になってしまっているのであろうケースを、非オタ・オタク問わず多々見かけてしまったもので、そういった状況の改善へ何かの足しになればと思い、注意喚起と情報への誘導だけさせて頂きました。
また、これを読んでいる貴方が、どんな物だか触ってみるのを止めはしませんけれども、その生成物を表に出すのは、背景を理解した上で慎重に考えた方が良いかと思います。
posted by 謡堂 at 03:28| 雑記
とか言いつつ語る 1/3
◆聞こえの良いことだけ言う輩は信用出来ないという話
さて、プラスチック製品が世に出てきた時、自然分解されない物質を自然界にゴミとして捨てることへの懸念の声はありました。巡り巡って、それは今、海洋マイクロプラスチック汚染の問題になっています。
報道などで皆さんもよくご存じの通り、原子力発電所に対して、津波による被害や全電源喪失を心配する声はありました。技術的に可能であるにも関わらず(防波堤や、コアキャッチャーに類する静的安全システムなど)、それらへの対策を怠った結果、我々は東日本大震災で、追加の甚大な被害を受けることになりました。
何が言いたいのかと申しますと、
・技術の問題点を指摘されても、導入して利益を得たい側・得ている側は、それを軽視・無視しがち(指摘を受け入れて導入されなくなったら困るし、対策を講じれば、その分の手間で利益が減るし)。
・指摘されていた問題は、大抵、後で形になる。
・被害を受けるのも、対策に追われるのも、問題を放置していたのとは別の人間達。
ということです。
ここまで大げさな事例を挙げずとも、ご家庭におけるペット問題を例に考えるのでもいいです。
・「お母さん、犬、飼いたい!」
・「散歩とかの世話、どんすんの。途中で投げ出さない?」「僕、ちゃんとやるよ!」
・→結局、僕君は途中で投げ出して、世話は全て、お母さんがやることに。彼は、犬を飼い始めた当初だけ、撫でたり散歩させたり楽しんで(利益を得て)、関心を失った後でも継続的に発生する面倒な世話は、お母さんに丸投げです。
今度は話を矮小化させ過ぎでしょうか? 結局、ミクロでもマクロでも、欲が絡んだ場合に人間のやることは、無責任になるってことです。
画像生成AIが、もし本当に利益を生んで広がっていくものならば、現在起きている被害や、予想されている悪影響は、今後拡大するなり、予想を超えるなりして、深刻化することでしょう。正直、野放しにされた場合どうなるか、見当も付きません。銃が産まれた時代の人達が、子供が学校で乱射する所までは、想像出来ていたとは考え難いように。
はたして、いじめの道具になるのか、反社会勢力の資金源になるのか、はたまた、石恵先生とビビッドアーミーの裁判(になるかは現時点では分かりませんが)の結果によっては、他社の看板イラストレーターの絵柄を画像生成AIに学習させて利用し合う、出版社・ゲーム会社間の戦争時代でも到来するのか。
頼まれもしないのに悪用コンテストをやっている人達がいるからなぁ……。
話を最初の例に戻しますと、プラスチックの流通や原子力発電の安全対策で、もう少し何らかの手が打たれていれば、後の苦労は大分減っただろうというのは、結果論でしょうか?
しかし、少なくとも無断学習・盗用AIに関する指摘や、規制方法を始めとする対策案は、現在、数多く出されています。推進者にしても、今よりも大きく社会問題化した後で、知らなかった、想定外だった、と言い訳が出来る状況ではありません(そうかな? ここは日本だ…… orz)。
将来に禍根を残さない為にも、誕生当時で色々と変更の利く今、検証や対策が行われるべきだと思います。
◆技術の発展には制約も含まれているという話
スマホに撮影機能があるからといって、何でも写真に収めていい訳ではなく、それで道行く女性の歩く姿やスカートの中を撮影したら、盗撮です(法律による使用方法の規制)。ちなみに、これまで取り締まりの根拠になっていた自治体ごとの条例に加え、今は「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」も出来ました。「けしからん!」という社会の声に押されて、新しく罪が規定された例でもあります。
自動車はレーシングカーともなれば時速300kmを優に超えることが出来ますが、そんな速度で町中を走られて激突したり人を撥ねたりされては困るので、普通車は、もっと速度の出ない造りです。そして、道路交通法によって、様々な規則もあれば、道路での制限速度も決まっています(性能の制限+法律による使用方法の規制)。
日本でアメリカのような銃乱射事件が起き難いのは、銃刀法で厳しく規制されているからです(社会から捨てることは出来ないが、濫用されても困る道具の対応例)。
ランサムウェアは技術としては凄いのでしょうけれども、日本経済の発展を願ってその製法をばらまく輩がいたら、ウィルス罪(不正指令電磁的記録に関する罪)で配布者も使用者も逮捕されることでしょう(技術その物が「悪」と見做されている例)。
事程左様(ことほどさよう)に、技術や道具という物は、研究室・開発室から出た時点で、もう好き勝手に振る舞うことは出来ないものなのです。
その存在は宝石だったとしても、社会に害を与えないように適切な制約(宝石のカット)を受け入れたり、適応した形に変化したりしなければ、安定した環境を手に入れて、より輝き発達することは、出来ないのではないかと思います。
将来、画像生成AI(もしくは、無断学習盗用生成AI)が、既存の技術・道具のどこら辺と同列に扱われていくかは分かりません。しかし、「つまらない規制で技術の発展を阻害するな」というご意見の方は、「急がば回れ」という言葉も心に留めておいて頂ければと思います。
分野こそ違いますが、(人間の手による)官能関係作品という宝石も、R18マークを付けたり、売り場を一般作品と分けたり(ゾーニング)して社会へ恭順の意を示しているからこそ、存在を許されている訳ですし。
もっと卑近な例を挙げるなら、もしも自動運転の技術が歩行者への安全対策を行っておらず、「だが、これを使わないと流通問題を解決出来ず、諸外国に経済競争で負ける」と強弁したとして、はたして日本社会から受け入れられるのかどうか、考えてみて下さい。
……と、説得するようなことを書いてはみたものの、強めな所で「クリーンなデータで1から学習のし直し」「児ポもどき・フェイクポルノを生成できないように、二次元三次元を問わぬアダルト表現の生成能力のオミット」「権利侵害を起こさないようにLoRAの読み込み不可」辺りを要求された場合、何が残るんだって気はします。「こういう方法でこういう物を開発できた」「世に出したら、こういうことが起きた」という記録以外に。同情では無いです。「需要の傾向を鑑みるに、やっぱりこれはランサムウェアの仲間なんじゃないのか?」という懐疑の念です。
いっそフェイク画像・嫌がらせ関連の機能を高めて軍用(?)の道へでも進めば、技術への制限は限りなく0に近づくと思いますが、どのみち民間人がおいそれと使える物ではなくなりますね。
posted by 謡堂 at 03:13| 雑記
とか言いつつ語る 2/3
◆絵師LoRAの法規制に関する一考察
※ここで語るLoRAは、全て非公式の海賊版のLoRAです。
※私の認識が間違っているかもしれませんが、LoRAという物は、大規模サイトなどに公然とアップロードされ、制作者以外へ配布されていくものだと捉えています。
※権利者が、版権キャラのLoRAを禁止したがっていることが前提です。
※権利者が、版権キャラのLoRAの存在を許容している場合は、この項目は間違いですので、読み飛ばして下さい。
ところで絵師LoRAって認めると(法規制出来ないと)、版権キャラLoRA配布の抜け道・隠れ蓑になりませんかね? 作る仕組みも配布経路も同じですよね?
今は馬鹿正直にキャラ名をつけていて侵害の状況も分かりやすいLoRAが、訴えられるリスクを避ける為に、架空の絵師名や隠語を使って配布されるようになるのです。
技術的に可能かは分かりませんが、絵師のLoRAを装いつつ、特定のプロンプトを入力すると、版権キャラLoRAとして働くとか。いちいち使ってみて、似ている物が出力されるか調べないと、取り締まれなくなりそうな。
他人のイラストを読み込ませないと作れないLoRAなんて無断学習・盗用の温床なのですから、面倒が無いように全て禁止でいいのでは?
そもそも、LoRAが配布出来ること自体が、まずおかしいんですが。
よく、人間の学習と同じだなんて擁護されていますけども、学習の成り立ちが違うのもさることながら、人間が努力によって身につけた技能は、たとえ上辺だけの劣化したものであっても、不特定多数の他者へ配布したりは出来ません。
せめて、全く別の物として、別のルールが必要なのではないかと思います。
絵師LoRA、オタクは思わず、モビルドール・システムかよって茶化しちゃうのですが、やられている方は堪ったもんじゃないですね。
◆版権キャラのLoRAは、個人利用ですら許すべきでは無い、という話
※ここで語るLoRAは、全て非公式の海賊版のLoRAです。
※人間の行う二次創作との違いについて
個人が二次創作を行う技能を習得して、一個人の生産力で二次創作活動を行うことと、その技能を上辺だけ模倣して不特定多数へ配布するLoRAは、根本的に違う現象だと考えています。
また、規模について比較するならば、人間達が画像生成AIを介さずに行う二次創作活動と、画像生成AIを利用する人間達が版権キャラのLoRAを用いて行う生成行為は、図書館と、ネット上の違法アップロードのような関係が当てはまるのではないかと考えています。
地域毎の図書館に一冊ずつ本があって、地域の住民が順番に借りていけるのと、ネット上のサイトから不特定多数が無制限にダウンロードして永遠に所有していけるのとでは、売り上げへの影響規模が桁違いで、後者は禁止されざる得ないでしょう。
図書館も無垢な立場では無く、出版物の売り上げに悪影響があるという批判や、新刊を入れるのは遅らせてくれという対策を求める声があります。その上で、存在の効用が認められるなどして、良く言えば慣習によって、悪く言えば、なぁなぁで、存在を許されてきました。今後、状況によっては図書館も、収集や貸し出しに何らかの制限を受けるかもしれません。しかし、ネット上の違法アップロードについては、影響規模がラインを超えているので、既に禁止されている訳です。
そして、版権キャラのLoRAは、書籍におけるネット上の違法アップロード並に悪質なので、個人利用すら許すべきでは無い、というのが、この項の主張になります。
人間が画像生成AIを介さずに行う二次創作についても種々の意見はございましょうが、この項では触れません。
さて、私のアンテナが低い所為で、ゲーム・アニメ会社などの権利者の大勢として、自社の版権キャラのLoRAについてどう考えているのか分からなかったので、個人の意見を述べておきます。
流石に常識でしょうか? 世間で語られていないのが、自明過ぎて誰も言わないだけだったりしたら、この項は読み飛ばして下さい。
私が具体例を挙げられるのは、主にネットゲームについてです。
【状況の想定】
合法になったのか、放置されているのか、ネット上に版権キャラのLoRAが存在していて、個人での利用が許されている(罰されない、取り締まられない)。
既に、FANZAのアダルト・ネットゲームのキャラのLoRAは、存在します。
仮定では無く、本当に。現実に。
んで、それを使って個人が自由にエロ画像を生成することが横行した場合、エロCG目当てにガチャを回す人は、どのくらい残るんでしょうか?
最近ではRVCとやらで、好きなエロ音声も付けられるそうですね。
ガチャの値段が適正かについては、意見が分かれる所でしょう。しかし、運営の付けた値段にユーザーが応じるか否かの価格交渉をしている所へ、第三者が無料か格安で海賊版を流すような行為が許されるのです。困ったことに、公式な絵柄からの変化は「二次創作」の個性として許容される上に、変化しているからこそ同一ではないとして、裁判で争う根拠にもなるのかもしれません。「ロッチ」が「ロッテ」では無いから権利侵害では無いと言い張る感じです(ビックリマンネタです。分かりますか?)
一般ネットゲームの着せ替えガチャや着せ替えスキンについて夢のある(?)話をするならば、ゲームの仮想ホーム画面に好きなキャラクターを(公式にも実装されていない)好きな衣装で立たせて好きなボイスを喋らせるぐらいのことは、もう可能でしょう。
アニメに話を向けるなら、アクリルスタンドやトレカといった、一枚のイラストに依拠しているようなグッズは、個人で画像を生成し、素材を加工して組み込み、自作することが可能かもしれません。
AI生成画像は、本家のイラストより質が落ちるかもしれません。しかし、自分だけが得られた無二の絵であるという錯覚や、素材を加工した苦労を加味した場合、本人の愛着において正式版に劣るものでしょうか?
無断学習・盗用仲間の音声についても、セールストークをさせて下さい。
アニメのキャラソンが自分好みでなくて残念でしたか? では音声合成AIにキャラ声を(無断で)学習させた上で、別の歌を歌わせてみましょう。そもそもキャスティングに、ご不満がある? それならば、別の声優さんの(無断)学習モデルをチューニングして別CVバージョンとしてUPしてみては如何でしょうか。大丈夫大丈夫、(取り締まる法律が無いので)合法です。どんどん活用して、技術の発展に貢献して下さい!
(……書いていて思ったんですが、生成AIのセールストークをするのは楽ですね。既存の作品に対する不満を並べて、それは生成AIで解決出来る! と謳えばいいだけですから。本当に良いことを書いている気にすらなってきます。上の物言いで傷ついた方がいらっしゃいましたら、誠に申し訳ございません。
解決した先に何があるか? さぁ、私は命じられた仕事をしているだけですので……。
逆に、生成AIの無断学習・盗用などの悪用について批判していると、既存の作品への不満点を我慢し続けろという主張にも繋がっていって心苦しくなる謎現象。ワタシハトクニネー)
さて、このように、全てが無料か格安で賄え、更に自分好みにカスタム出来る状態で、公式の「押しつけてきた」データにお金を支払うものでしょうか?
ネトゲをサ終するまで無課金で遊び尽くしても恥じない、アニメを見るだけ見て円盤を買わない、YouTubeでMVを視聴して其処で終わる、そもそも物価高で振る袖の無い、我々ユーザーです。一度、無料に近い版権キャラLoRA他の味を覚えてしまったなら、コンテンツにお金を払うなんて「悪しき」「古い」習慣を維持出来るものでしょうか? 本当に?
再び、アダルト・ネットゲームのガチャを例に出してみます。
フタナリ凌辱シーンのあるキャラでしか回さない人間が、居たとしましょう。そのゲームの版権キャラLoRA達と出会い、フタナリ画像を生成しまくっていて、さぁ、公式がキャラAのフタナリ凌辱シーンのある着せ替えガチャを出してきました。手元に、キャラAのLoRAはあります。絵柄、公式とは違うけれど、気に入っています。公式ガチャの当たる確率は1%、当てるには無料石に加えて課金が必要そう。
……どうします?
威勢のいいことを言っている私だって、使っていいなら、堕落してお相伴に預からせて頂きたい所です。サ終してしまったネトゲのホーム画面を再現&発展させ、一人でニマニマ楽しみたいです。
が、駄目でしょ、これ。
こんなん認めていたら、コンテンツ産業は、まともに育ちます? ここから、どのような形で経済は活性化するのでしょうか? まさか、生成AI用のデータの配布で小遣い稼ぎをする人間の増加と、企業的な規模の収益低下が、バーター出来る訳ではありませんよね?
私の「サ終してしまったネトゲのホーム画面を再現&発展させたい」という一見侵害の少なそうな願望だって、実現してしまったら、そちらに付きっきりで新しくネトゲを始める数が減って、課金の機会も減ります。
私の杞憂なら幸いです。実際、その方が気分が楽です。
一応、杞憂を続けますと、逆に、この状態から企業・運営は、無断学習・盗用ばっちりの画像生成AI等を活用したとしても、どうすれば脱却できるのでしょうか? 魅力的なキャラを産んでも、スター声優を育てても、人気の出た傍から版権キャラLoRAや非公式な音声学習モデルによってフリー素材にされていくような状況です。無理ゲーなのでは?
仮に、生成AIの学習機能を使ってクリエイターを買い叩き、安く素材を揃えられたとしても、そこからどんな商品やサービスを作れば、経済的に勝てるのでしょう? (というか、企業側がそういうことをすると、ますますユーザー側も無断学習・盗用していいもんだと思っていくと思うので、それは止めた方がいいと思いますが……)
別に不幸を願っている訳では無いですので、新しいビジネスモデルが構築されるなら、それはそれで結構なことだと思います。
公式キャラLoRAって、ガチャより収益の上がるものなのでしょうか。
公式のキャラ声ボーカロイド、兼、ボイスロイド……需要はあるかもしれませんが、嫌いな声優の演技に被せてネットにUPするような行為は、禁止にしておいた方が良いかもです。
……ハッ……ポケモンの……サンゴちゃんの…………いえ、何でもありません。
ケチを付けるだけなのも感じ悪いですので、自分の貧困な発想でもネタ出ししてみるならば――、画像生成AIをゲームに組み込んで、手に入れたプロンプトでキャラの好きなエロ絵をゲット出来るようにしてみたり?
美少女相手のボス戦でバッドステータス(触手拘束とか催眠とか)を付与しながら勝つと、それに応じたプロンプトでエロCGが生成され、入手出来る感じです。気に入るHCGが出るまで周回だ! みたいな。ガチャでのキャラゲット=そのキャラの版権LoRAのゲーム内での使用権ゲット、みたいな。
レアキャラやレア武器は、スキルで特殊属性のバステ(フタナリとか腹ボテとか)を付与出来るのです。
ゲーム内の非課金通貨を投じて「地下室」で画像生成出来るけど、課金石(リアルマネー)を投じると、更に画質や大きさ、一度に反映可能なプロンプト数が上がるよ、という仕様の是非を巡って荒れる感じです。
……まぁ、自分がやってみたいだけですけども。もっとも、外部の画像生成AIで自由に出来ることですし、版権キャラLoRAが放置されている状態では、わざわざ面倒臭いゲームをする必要は無いですね。
何をするにしても、海賊版の版権キャラLoRAは絶対邪魔者だろうということは、申し上げておきたいです。全ては、無断学習・盗用の問題に帰結します。公式キャラLoRAのデータすら、無断学習・盗用しまくりの海賊版に吸われてしまうことでしょう(『反転アンチずんだもんが解説!~生成AIの闇に物申す~』(30:45辺り)の受け売りです。でも、実際にそうなると思います)。
今後、日本のコンテンツ産業が発展していく上で、画像生成AI等の無断学習・盗用、及び、版権キャラの海賊版LoRAなどは、全く害にしかならないと思いますので、何とかして規制するか、自分達が支配出来ている形で収益構造に組み込むか、していく必要があるだろうと、軽輩の身ながら具申する次第でございます。
気がついたら、あんなもんがばらまかれていて、世の中が一変していて、恐ろしい限りです。
絵師LoRAにしても、版権キャラLoRAにしても、
賞賛している方々は、「アートの民主化」だなんて仰ってますけども。
それは元々、「富裕層以外の人々も美術館に呼び込もう」ぐらいの意味だった筈なんですけども。
大分、変質した使い方をなさっていらっしゃいますけども。
実際にやろうとしていることは、コンテンツの強制共有、デジタル共産主義なのではないですか?
それが上手くいかないことは、既に歴史が証明していますよね。
日本全国のスーパーから品物を勝手に取って行っていいなら、得する人は沢山居るでしょう。それによって豪華になった食卓がSNSにアップされたり、食材をふんだんに使ったアレンジ・レシピがネットに投稿されたりして、一時的に世の中が景気良くなったようにすら見えるかもしれません。
しかし、持って行かれたスーパーは潰れます。その後、どうするんでしょうか。潰れることが分かっていて出店してくる、聖人みたいなスーパーなんてありゃしませんが。
新しいビジネスモデルを構築できないスーパーが悪いのですかね?
流石に、どこかの段階で自制が働き、揺り戻しが起きると信じたい所です。
posted by 謡堂 at 02:18| 雑記
とか言いつつ語る 3/3
◆「合法、脱法、違法」✕「道徳、感情」✕「金儲け」=???
言われるまでも無く分かっている方が大半かと思いますが、触れないと据わりが悪いので、触れておきます。
なお、「脱法」の概念につきましては、脱法ハーブ、脱法ドラッグ、などで検索してみてください。本職(?)の方々の分かりやすい説明や警告が沢山出てくると思います。
法規制が追いついていないだけの、麻薬っぽい危険な薬物を示すのに使われる言葉です。
「(取り締まる法律が無いから)合法ですよー」「(罰されないので)大丈夫ですよー」と売りつけられた所で、安全安心である保証は全くありません。
……何かと似ていますね?
さて、法律と道徳(感情に由来する人間の不文律?)は車の両輪のような所があって、社会の道徳心を育む為に法律が制定されることもあれば、社会の道徳心に影響されて、それに沿うように法律が改訂されることもありましょう。
人間社会は、道徳Aと道徳B、他、が常に多数派工作をしているようなもので、良くも悪くも法律は変わっていきます。
今は、画像生成AIの無断学習・盗用に好き放題にやられていた人間達が反撃で法規制などを求める逆襲タイムに入っているように見えますが、今後、画像生成AIの利用者が増えていったら、逆にそちら側に有利なように法律が変わっていく可能性もあります。
そうなった場合でも、無断学習・盗用ぐらいは「悪いこと」の分類で括られ、海賊版LoRAの利用者が「割れ厨」「転売屋」辺りと同列に語られる程度には、著作権・肖像権に理解のある社会の存続を祈るばかりです。
その方が、経済的にも得な筈です。各種生成AIは、日本が経済的利益を得る為に導入が推進されているのだと思いますが、作品・コンテンツから収益が上がるのは、それに著作権が認められ、他者に勝手に利用されないからこそ、なのですから。
……ちょっと大げさな事を言うと、コンテンツ経済や文化、及び道徳を殺す麻薬か何かのように見えるんですよね、今の状態の画像生成AI。
そこら辺を上手く制御・規制出来た所の方が、勝ち組になれるんじゃないかなぁ……。
◆ユーザーの求めている物
私なんぞが商品のターゲット層なのかは分かりませんが、一消費者として言わせて頂くならば、道具に求めている一番の要素は、「使っても後ろ指を指されないクリーンな物」です。
よく切れる鋏でも、盗品ならいらないです。
どうも、現状の画像生成AIを賞賛している方々は、この観点がすっぽり抜け落ちているように思います。
種々の問題を抱えたまま、活用をごり押ししてトラブルになり続けるよりも、せめてクリーンなデータで1から学習をし直すなどしてリスクを解決した方が、普及は早くないでしょうか? 今のままだと、最悪、アングラ・ツール行きになる気がします。
まぁ、嫌なら使うな、そんな労力をかけて作り直しは出来ない、ってんなら、それはそれでいいです。
私にとっては、無ければ無いで済んでいくものなので、商品売り場から離れます。
・補足の気取った物言い
分かるかなぁ。二次元美少女が触手に絡みつかれているようなカワイソウな絵や文章でしかヌけないんだけど、現実の女性や子供や絵描きさんが可哀想なのは萎えて使い物にならないんだ。
それが触手の仁義であり、ジャスティスなんだ。
◆「児童ポルノを利用することも、そこから利益を得ることも許さない」という姿勢は、絶対的に正しいという話
最後に、悲観全開な上に、性表現規制の話になって論点がばらけるので最初の項から分けた、悪い予測を、もう一つ。
(他の画像に目をつむったとしても)児童ポルノが含まれているデータセットで学習を行ったと批判されている画像生成AIの利用が、二次元系の創作作品で普通になった場合、二次元と三次元の壁が破壊されるような気がしますね。悪い意味で。
つまり性表現の規制派から「生成物に三次元画像・児童ポルノ由来の要素が混ざっていることを否定出来ない」「オタクは児ポを使って二次元(っぽく見えるだけで三次元と繋がりがある)エロ画像を大量生産している!」なんて難癖(ではないのかも……)を付けられ、性表現の規制や禁止のキャンペーンを張られる訳です。
勝ち目は無いです。だって、「児童ポルノを利用することも、そこから利益を得ることも許さない」という姿勢は、絶対的に正しいんですもの。私らの、二次エロ作品を作りたい、二次エロ作品を見たいという願望よりも。実際にデータセットに含まれている量のパーセンテージだとか、出力結果に、本当にその要素が含まれているのか、なんて議論は、吹っ飛ぶくらいに。
これに関しては、初手の初手でボタンの掛け違いをした画像生成AIが悪いとしか言いようがありません。規制派の動機が善意であれ、悪意であれ、正義は向こうにあります。
画像生成AIを使っていない作品も沢山ある? 使い方が高度になってオタクですら判別の難しい物を、いちいち選別してやる義理は無いです。纏めて禁止だ禁止。マーケットから消えろ。……児ポ擁護者扱いされながら、これに反論できる言葉は、お持ちですか? 同じ画像生成AIから三次元っぽい画像も出力出来ることを、どう説明しましょうか?
現在の画像生成AIを使うということは、これまで、二次元と三次元は別物、水と油だから混じらない、別々のレギュレーションが適用されるべき、そこに浮かんでいる油だけ掬って捨ててくれ、と主張していた所へ、洗剤を垂らして攪拌するような行為なのだと思います。濁った汚い水が出来上がるので、油汚れとして、纏めて捨てられるのです。
もしも、自分達の主張を崩す毒を自分達で飲んでしまったなら、死ぬしか無いです。
悲観に悲観を重ねるならば、仮に導入が一般作品だけに留まって、二次エロ系が自制して使わなかった場合でも、矛先は二次エロ作品に向かうのでしょうね。迷惑なことに。もしくは、推進に熱心な誰かさん達に確信犯的にスケープゴートとして差し出されるかして。
そうなっても物書きには関係無い……無いかな? 煽りを受けて文章も規制されそうな気がする……。少なくとも、表紙や挿絵、CGが付くような作品は、売り上げや内容への影響を免れないんじゃないかな。
以上、自分がまだ生きていると思っている死者からの忠言でした。
posted by 謡堂 at 01:39| 雑記
2023年02月17日
ヴュゾフィアンカ・バッドニュース 2023 02/17
・良いお知らせ
魔界とは何ぞや? ということが気になって、ずっと考え続けていたのですが、
この度、めでたく真理に到達することが出来ました。
つまり、この世は、ヤキナ・オブゼが創ったのです。
・悪いお知らせ
私は正気です。
posted by 謡堂 at 13:20| 雑記
百物語 「利他の極北、御破算の四様」 1/2 /語り手:雲海王ゼイラー
これは、「利他の心」が、混沌より「愚者」として生まれ、「創造主」の座を経て、「道化」となるまでの顚末である。
そして、汝ら「魔」の誕生した淵源である。
初めに大いなる混沌が在った。
混沌とは、全てが生じる寸前で内包されている状態。同時に、まだ一つの存在も生じていない状態。すなわち、如何様にでもなれるが、如何様にもなっていない状態のことである。
ある時、この世で最初の偶然が起きた。
「利他の心、他者の幸福を願う心」が、混沌の中に生じたのである。
ここに、万能故に無能という、混沌の均衡、調和は破られた。
混沌とは、全てが生じる寸前で内包されている状態、であった。
その中から何かが一つ此岸に生まれたならば、それ以外の全ては彼岸に取り残される。
「利他の心」の周りには、「利己の心」及び「利他の心でも利己の心でも無い、それら以外の全て」が取り残され、世界――最古の世界となった。また、「利己の心」は自身が変化することも行動することも嫌い、ただそこに在るだけの、因果・法則と呼ばれる存在になった。
その状態は、既に混沌でも万能でも無い。
原初の完全なる調和を崩してしまった「利他の心」は、後世において「愚者」と呼ばれるようになった。
さて、万物の坩堝であった混沌から、内在していた要素が分裂・分離することにより、万能性は失われた。しかし、混沌から生じた物らの、その総体から、真の意味で事物が失われることは、決して無い。
故に、愚者と世界とが接触し、両者が混じり合った場合にのみ、万能性は擬似的な復活を遂げる。愚者は世界から、未だ生まれぬ物を望むがままに取り出せるようになったのだ。
こうして「愚者」は、「世界に不可逆の変容を齎す呪い」、もしくは、「創造主」となった。
さて、「創造主」となった「愚者」――「利他の心」には、幸福を願うべき他者が必要であった。故に、彼の者は、幸福を感じ取れる存在として、思考する物質――知性体を創造し、その幸福を願ったのだった。
我々、知性ある者の原型は、かような仕儀により世に形を得、思考する物質を取り出された世界には、思考しない物質が取り残された。
次に、彼の者は、世界から種々の幸福を取り出し、知性体達へと分け与えた。
食事で腹を満たす幸福、睡眠を貪る幸福、姦淫に耽る幸福。
その他、思考を形にする幸福、新奇に臨む幸福、他者から奪う幸福、他者を損なう幸福、幸福を求めぬ幸福――矜持、全ての幸福を奪われた者に最後に残される幸福――復讐、ありとあらゆる幸福を、である。
幸福を全て取り出された世界には、不幸のみが取り残され、その世界に存在する知性体達を苦しめた。
一例を挙げるなら、食事で腹を満たす幸福を得た者は、食する物が何も無い世界へ放り出され、永久(とわ)の飢餓に苦しむのである。
それを見て嘆いた彼の者は、世界から幸福を満たせる物を取り出し、各々の知性体へと分け与えた。
故に世界には、幸福を満たせない物が取り残され、その究極である所の死が顕れた。
一例を挙げるなら、食事で腹を満たす幸福を得た者は、食料を得た代わりに、腐敗・毒・寄生虫等と戦わなければならなくなった。そして、最終的には知覚の終焉、死が確定したのである。
つまり、我々知性体は、幸福を得たが故に、その幸福によって死なねばならなくなったのである。
他者が不幸に見舞われたり、死すべき運命(さだめ)にあることなど、「利他の心」である彼の者には、到底、認められないことだった。
彼の者は、不幸を緩和し消す為に、夢や希望を取り出した。
それ故に、不幸を増大させ極限化する、絶望もまた顕れた。
彼の者は、死の到来を遠ざけ、永劫の彼方へ追いやる為に、盾となる物を取り出した。
それまで混沌から産まれた物らの特性として、全ての因果は混在していた。指標が無いが為に、それぞれが別個に脈絡無く、言わば狂気的に存在していた。結果が混ざり合い、逆転し続け、死も常にあらゆる知性体へと降り注いでいたのである。
我々が「時間」と呼ぶようになった盾は、因果を変化の道筋に沿って並べ直し、死を全ての最後に位置づけた。これによって我々は死までの猶予――生を得たが、その代わり、因果は不可逆となり、死という結果も決して覆らなくなった。
また、死を遠ざける盾としての時間の反概念として、死に限りなく近しい空間――虚無が顕れ、時間の増大に従って、全てを呑み込み始めた。
特に、長命の者や不死者は、これに抗わなければならなくなった。
彼の者は、己が全ての不幸と死を一身に引き受けることで、他者に幸福のみを残そうとした。
それによって彼の者は、不幸と死の受容体である所の肉体と知性を手に入れたが、引き受けることが出来た分の不幸や死が新たに湧いてくるだけで、意味は無かった。
また、我々にとって幸か不幸か、利他の心には自分を守ろうという発想が無かった為、彼の者は時間という保護膜の外側にいた。故に、彼の者にとって死とは可逆な現象であり、今も死に続けながら蘇り続けている。
彼の者は、個に力を与え、不幸や死に抗わせようとした。
それ故に、世界には力を失う現象、衰弱や老衰が顕れた。
彼の者は、個達に、言葉や協和の概念を与え、集まって一致団結することで不幸や死に抗わせようとした。
それ故に、様々な種族と文明が生まれ、格差と搾取、偏見と差別、戦争と災害に悉く焼き尽くされた。
手を尽くしているにも関わらず、一向に不幸も死も減らない様子を見て、業を煮やした彼の者は、ついに全ての知性体へ不老不死と全知全能を与えようとした。
全ての知性体を、何でも願いが叶う存在、如何なる不幸も寄せ付けぬ超越した存在へと創り変え、「超越した幸福」を享受させようとしたのである。
そして、変容を実行した正にその瞬間、そこで漸く、不幸や死が増大している原因が己の行いの所為であることに気がついた。我々にとって幸か不幸か、他者の不幸と死を引き受ける際に受容体として得た知性が、気づかせたのである。
そして、このまま変容が完了すると、全ての知性体が不老不死と全知全能を得た瞬間に、その知覚の終焉たる全ての知性体の「超越した死」――全ての知性体の「絶対の消滅」が世界に顕れ、被造物達が絶滅してしまうことを悟った。
気が動転した彼の者は、咄嗟に、その身をもって変容を堰き止め、反対側へと弾き飛ばした。そして、これ以上新たな不幸を誕生させぬ為、つまり、自分がこれ以上他者の幸福を願わぬように、全ての記憶を世界へ棄て、見聞きしたことも片端から滑り落ちるように記憶の底に穴を開けると、表舞台から去って行った。
こうして「利他の心」は、「愚者」として生まれ、「創造主」の座を経て、「道化」となり、世を放浪する存在となったのである。
忠告しておく。
「道化」とは「滑稽な者」を表すと同時に「道ばたで出遭う化け物」の意も込めている。
もしも汝が、「お節介を心臓に生まれてきた」などと嘯く存在に遭遇しても、絶対に物品を受け取ってはならない。何故ならば、それは今語った幸福と同じ方法で世界から取り出された物品であるからだ。
受け取れば、一時的な幸福は得られるであろう。だが、零落した彼の者が、汝が為の幸福を願い、それを実現させるべく贈り物を産み出す時、必ずや、汝が為の不幸も世界に取り残され、顕れている。
それは、いつか必ず汝に牙を剥く。死が救いとすらなるような、恐るべき不幸が汝を見舞うことだろう。
心せよ。
彼の者は、最後まで選択を間違え続けた。
学習の根源たる記憶を棄てても、在り様の本質たる力を棄てることは能わず、懲りずに他者の幸福を願い続け、しかし、その試みは必ず失敗する。しかも、その失敗から学んで行動を改めることは、決して無い。そのような災厄が、如何なる制約も受けずに地を徘徊する世界に、我々は在るのである。
ここまでの話を狂人の戯言と嗤うならば、我が名を知れ。
我は雲海王ゼイラー。血を流す幸福を与えられし原初の竜にして、打ち棄てられた道化の記憶を浴びて受け継ぎし語り部なり。
言祝ぐがよい。
汝らは幸福を望まれて生まれてきたのだ。
嘆くがよい。
汝らは、それ故に不幸に見舞われるのだ。
憎しみと共に崇めるがよい。
万能の無能たる女神、創世神ヤキナ・オブゼを。
posted by 謡堂 at 12:40| ◆聊枕百物語
百物語 「利他の極北、御破算の四様」 2/2 /語り手:雲海王ゼイラー
さて、彼の者の試みた最後の行程――全ての知性体へ不老不死と全知全能を与える変容と、それを遮る割り込み――は、我々の感覚からすれば無に等しい、刹那の間に起きた。
だがしかし、両者の間には確かに間(ま)が在り、割り込みは、変容が超常の産道を潜り抜ける、その丁度半ばの所で起きた。
そして、彼の者が変容を「反対側」へ弾き飛ばしたが故に、世界は二つの未来へと引き裂かれたのだ。
すなわち、我々「思考する物質」たる知性体が、不老不死と全知全能を得るが故に、その瞬間に「超越した死」と遭遇し、絶滅してしまう未来。
または、弾き飛ばされた変容が「思考しない物質」へと振り撒かれ、石塊(いしくれ)に至るまで不老不死と全知全能を得た結果、つまる所、現(うつつ)が不滅となった結果、夢という反物質と対消滅し、それに巻き込まれて知性体も消失してしまう未来である。
本来、我々は、どちらかの未来に至って滅んでいなければならない。
それがこうして、未(いま)だ命脈を保っているのは、道化の造った舞台が二つの終幕へと引き裂かれる、その亀裂から、三番目の破滅、荒ぶる猛威が顕れたからである。そして、先行する二つの脚本に対して、強烈な反抗の作用を及ぼしたからである。
言うなれば、それは、確定に叛く不確定。観測の向こう側より噴き上がる存在(もの)。
必定の滅びに抗う存在にして、永遠の楽土を破壊する存在。
世界へ絶えず変容を齎してきていた愚かなる創造道化の不在を埋めるべく、残された世界から押し出されるようにして顕れた、まつろわぬ力の奔流であった。
まつろわぬ力は、確定した二つの未来の間、概念的な意味での中央に陣取り、両者が完遂されることも、己の前から逃げ去ることも赦さなかった。
故に、世界の在り様は、絶えず引き伸ばされ続ける撥条(バネ)、もしくは、流砂の中を登り続ける旅人の如き様相を呈したのである。
鬩ぎ合う破滅によってのみ、我々の安定は保たれる。
全ての物事は、無為に前へと進む。
さて、定まらぬ未来と破滅の間(あわい)にしがみつき、辛うじて存在し続けている我々や事物にとって、それは決して心安らかなる状態でも、負荷を受けない状態でも無い。
故に、絶えず命は悲鳴を上げている、絶えず構造は軋みを上げている。
それら悲鳴と軋みは、やがて、まつろわぬ力と共鳴し、決して消え去らぬ異物、何者にも満たされぬ空隙へと変質した。また、一部は生物や無機物、形無き概念と混ざり合い、条理に互する不条理、世の理に背き牙剥く異形として固着した。
受け入れぬ者。悲鳴と怒号、軋みと衝突より産まれ出ずる者。
所詮は偶然のバランスによって成り立っている、この世に対し、強烈な否定の執念、変革を誓う威志を持つ、まつろわぬ力の申し子ら。
その存在らは、
世の理から外れながら、己の理には縛られる。
境界線も天秤も己が内のみより沸き上がらせ、
悪を謳いながら、善を為す。
善を誇りながら、悪を為す。
後代に至り、その概念を示す為、この世で唯一の言葉が造られた。
すなわち、「魔」である。
また、世からあぶれざるを得ない「魔」の流れ着く場所、土地からして魔性その物である、集積地にして環流地。それが「魔界」である。
魔が力を振るう時、周囲の世界は共鳴によって破壊され、魔の望むように変質させられる。その変質は、更なる軋轢を生み、魔が退かぬ限り、いずれ現世を呑み込み改変し尽くさずにはおかぬ。
故に、汝ら魔物は、己こそが現世に対する破滅の未来たらんとする者達である。
そして、それぞれが別個の破滅の未来の影である者達を、より広汎な潮流を示すことで糾合する存在、それが「魔王」である。
世において、まつろわぬ力は魔の咆哮を通じて噴き上がり、魔の消滅を通じて鎮まる。
何故ならば、荒ぶる猛威もまた、汝らに共鳴し、その活動へ影響を受けているからだ。あたかも、形代となった藁の人形が、被呪主の踊りに合わせて踊り、また、自身の踊りに合わせて被呪主を踊らせるが如く。
故に、汝らは、世の鼓動であり、贄である。
魔の勢力が伸張し切るならば、現世はまつろわぬ力に呑み込まれ、あらゆる確定を失い、千々に引き裂かれるであろう。逆に、魔の勢力が衰退し切るならば、現世はまつろわぬ力という変容への軛(くびき)を失い、双極の終焉へと引き裂かれるであろう。
故に、道化の後葉にして、己こそが愚者に成り代わらんと欲する痴れ者共よ。
思うがままに世に猛威を振るい、為されるがままに世に滅ぼされるがよい。
それこそが世を保つ供犠であり、祝詞(のりと)なのである。
その屍の塵澱が、いずれ現世を覆い尽くす、までの間は。
posted by 謡堂 at 12:33| ◆聊枕百物語
百物語 「利他の極北、御破算の四様」 おまけ
パルセイズ
「…………(『話長ぇなぁ、この爺ぃ』って顔)」
シェリスエルネス
「…………(『昔、アレにおしめを替えられたから、今、こんな淫惨な状況に陥っているのでは。替えられたおしめの中に、ヤキナ・オブゼが産み出した物品は、なかったのか』って必死に思い返している顔)」
ザーバッハ
「…………(『本人に長女だと信じ込ませて自勢力に迎え入れたはいいものの、もしやデメリットしかないのでは?』って顔)」
posted by 謡堂 at 12:30| ◆聊枕百物語
2021年05月24日
百物語 悪魔の善意 /語り手:ヤキナ・オブゼ
ケッケッケェ、はぁい、皆さん、こんばんはぁ。
お節介を心臓に生まれてきた魔界の道化師、ヤキナ・オブゼの姉ちゃんですよんっと。
今宵も、良い百物語日和でござんさぁねぃ。
と、話の前に……、ちょいちょい、そこの人間さん。
そうそう、そこの、あんたさん。
この福引きのガラガラ、回していかんかねぃ?
いやね、行きつけの商店街の活性化にでもなれればってねぇ、開催してみたんだけんどもねぇ、景品が大分、余っちまってねぇ……。
うんにゃあ、回してくれる人は居たのさぁ。だぁけど、誰(だぁれ)も当たった景品を受け取ってくんなくてねぇ。……足りなくなるよりマシったぁいえ、人間ってぇのは、無欲なもんさねぃ?
さて! そこでアンタだ!
券はいらねぇ! 好きなだけ回して構わねぇ!
見事、豪華粗景品を引き当てて、用意した品々が山のように残っちまって、ちょっぴり傷心なヤキナ姐さんを、よしよしと慰めてやっとくんな!
正直、抽選無しで残り物を全部、御進呈しちまってもいいんだが、そこは雰囲気作りってぇことで、一つご了承頼んまさぁね!
……。
…………。
………………。
(チリンチリンチリン!!!)
はぁい!! おぉぉめでぇぇぇとさぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!
いやあっ!! 凄いねぇっっ、持ってるねぇ!!
一発で特賞と来たもんだ!!
きっと景品の方でも、アンタに貰われたいと思ったんだろうねぃっ!
はいっ、これ、特賞Aの『特製ミニチュア・ブラックホール』。
夏休みの観察日記に最適!
子供の科学離れを防ぐにゃあ、実物を見せて興味を惹くのが一番!
創ってやった学者先生、悲鳴を上げて喜んでくれてたっけなぁ!
そいよ、確かにお渡し致しやしたぜぇ♪
後、ちょぉっと待っててなぁ、今、持ち帰る用の紙袋ぉ出してやっからねぃっ。
どぉぉこぉにやったかねぇ〜、ガサゴソ〜っと。
――へい、お待ちぃ! って、あれ? 人間さん? おんや、おんや、人間さん、ブラックホール置きっぱなしで、何処に行っちまったんで?
えぇぇぇぇ! またかい!?
人間ってぇのは、絶対に福引きの景品を受け取らねぇってぇ信条でも持ってんのかねぃ?
おい、お前さんら。そこでアホ面ぶら下げてる魔物連中のことさぁね。
今の人間さん、何処に行ったか知らねぇかい?
良いもん当たったウキウキ気分で、肝心の景品忘れて帰っちまったってんなら、追いかけて届けてやんねぇと。いや、そもそも怪談も、まだ聞いて貰ってねぇ訳だけども。
……え? 金輪際、関わってやらないことが、せめてもの供養?
もう、放っておいてやれ?
何、言ってんのさぁ?
……仕方ねぇなぁ。
景品も玉も、元に戻しておくかね……。
気ぃ取り直して、あたしゃ怪談を始めますよっと。
さてさて。
世間様じゃあ、怖いもん、悪い奴の代名詞にされちまってる悪魔ってぇのは、実は人間のことが大好きな奴らなんだなぁ。
そりゃもう、人間を猫っ可愛がりで、お節介焼き。助けになってやりたくって仕方が無い! ってぇ連中なのさ!
だけんど、悪魔なもんだから、人の助け方ってぇのが、よく分かってねぇんだな。
手ぇ出すと、必ず相手の人間を不幸にしちまう、可哀想な連中でもあるのさね。
あ、さて。
今宵、このヤキナ・オブゼが語りまするは、そんな悲劇とも喜劇ともつかねぇ傍迷惑なお話で――、
――あん? もういい? もう分かった? 何がでぇ?
――一度に二話、演(や)るのは、ルール違反? だから、これから一つ話そうってぇ話じゃないさね。
おいおいおぉい! 語り手を引き摺り降ろそうってなぁ、どういう了見でぇ! まだ枕が終わったばっかじゃねぇか!
はぁ!? あたしゃ、悪魔じゃなくって魔物――――!!
posted by 謡堂 at 16:13| ◆聊枕百物語
百物語 魔界実話怪談1 /語り手:シェリスエルネス
※「前回の話」の続き。次の番。
私(わたくし)、今のアレにおしめを替えられながら育てられたんですの。
……過酷な乳児期でしたわ……。
○乳児期中にシェリスエルネスが会得したスキル(抜粋)
・毒物耐性、毒物看破、毒物栄養素変換
・味覚鈍麻、味覚防御、攻性味覚、ゲテモノ耐性、ゲテモノ好み
・非食物分解、非食物栄養素変換
・魔力欠乏耐性、魔力枯渇時生存、魔力節約、魔力回収、魔力マーキング
・活力の前借り
・虚無耐性、虚無捕食、混沌耐性、混沌捕食、自生命維持、自存在維持
・トラップ受け身、トラップ看破、トラップ回避
・呪いのアイテム耐性、呪いのアイテム調教、呪いのアイテム逆支配、呪いのアイテム破壊
・転落受け身、エア・クッション、瞬間浮遊
・揺さぶり耐性、脳防御、揺さぶり反撃
・睡眠時警戒、睡眠時反射反応速度UP
・気絶回復速度UP、気絶回避(根性判定)、気絶時布石、気絶時魔術維持
・第六感
・脱出判定+3、緊急脱出判定+1
・瞬間回避、絶対回避、短距離ワープ、瞬間非在
・全力防御、死力防御
・再生、報復再生、再生速度UP
・這い戻ってくる乳児(乳児期限定)
・索敵、道化師索敵
・這い這い、忍び這い這い、ハイ這い、這時膝保護 (全て、乳児期限定)
・ローリング(横方向)、抱きつき、戦略的粗相、零距離スクリーム (全て、乳児期限定の特殊アクション)
・ステルス、迷彩(石床、泥)、潜伏(石床、泥)
・匍匐前進、報復前進、報復全心
・厨房侵入、厨房潜伏、厨房窃盗、厨房陣地化、厨房経由パス
・狂気耐性、対狂人会話、対ゴアメイド交渉
・不在証明、時間の不在
・犯行手順構築、犯人特権
・無言語魔術、泣声魔術、マンドラゴラ・シャウト、バンシー・キーニング
・ラップ音、ポルターガイスト、念動力
・報復の乳児(乳児期限定)
・誰が道化師を殺したのか(乳児期限定)
・ゴシックホラー・インファント(乳児期限定)
posted by 謡堂 at 15:56| ◆聊枕百物語