2012年03月17日

ヴュゾフィアンカ・バッドニュース 来年用おみくじ付き

 
「私のタロットは真実しか語らないけれど、ちょっぴり悪い方向に拡大汚染しちゃうの。
 それでも良ければ、このサイトの未来を占ってあげるわ。
 
 あら、遠慮しないで?
 占ってあげる」

 そう嘯いた凶鳥は、慣れた手付きで『貪欲呪栞(グリーディ・タロット)』をシャッフルし始めた。常人にも視認できる程の瘴気を立ち昇らせているそれは、有り体に言ってしまって、剥き出しの罠である。
 やがてテーブルに、伏せられた二十二枚の破滅が、扇形となって広げられた。

「There are two sides to every story. 禍福は双面の狼であることを見せてあげるわねーぇ?」

 どうやら、貴方は、そこから二枚の札を選ばなければならない。
 きっと忌まわしい暗示が、希望も絶望も等しく引き裂くことだろう。

 刻は満ちている。
 運命に指を伸ばすも、拒絶して席を立つも、心のままにすると良い。
 どのみち、避けられない。
 訪れる者は必ず訪れ、堕ちる涙は堕ち、沈む銀月は必ず沈められるのだから。

 薄く微笑んだ凶鳥は不気味な沈黙を守り、じぃっと貴方を見詰めている。








○おまけ 2013年用おみくじ

「ん〜、辛気臭い話題だったわねーぇ。
 さて、近報の用事も済んだ所で、正真正銘、とっても良いお知らせよー。
 来年は巳年、私の尻尾の支配する年だわ!」







「うふふ、五年後の酉年は私の翼の年だし、祖先が同じ狼を犬だと言い張れば、六年後の戌年だって私の髪型が支配する年ねーぇ!
 あらやだ、干支の四分の一を制覇しているじゃなーい。

 そんな私に吉凶を占って貰えるだなんて、お前は、とんだ果報者」

 そう言うと凶鳥は、ケープマントの懐から、徐(おもむろ)に六角柱状の御神籤箱を取り出した。
 妖しげな陶器製だ。濃紺を基調にしつつも、光の加減によって次々と色合いを変えている。その表面に描かれた、この世では見たことも無い奇怪な星座達が、心が吸い込まれそうな程に明るく輝き踊っていた。
 中からは、ガラガラと鳥の骨が、ぶつかり合うような、不可思議な音がしている。

「占いって、人のを見ていても、つまらないじゃなーい。
 これで私達、魔物は、サービス精神旺盛なの。

 大丈夫よーぉ、手加減してあげるから。
 グリーディ・タロットでじゃなくって、この星令箱で占ってあげる」

 外観は気にしなくていいと、彼女は囁く。
 これは只の、雰囲気作りなのだと。
 もっとも、魔に所持された物品は、それだけで本人の性質に侵されていくものであるが……。

 妙に機嫌の良いヴュゾフィアンカは、随分と貴方の運命に触れたいらしい。
 陶器の箱が、俄(にわか)にしっとりと、女の肌のような生々しいぬめりを帯びた。
 堰を切ったように星の並びが表面を流れ出し、時折ゆらゆらと、翼を広げた悍ましい怪鴉の影がよぎっては、嘴でそれらを追い掛ける。まるで異界の宇宙の光景を、ヘキサゴナル・プリズム(六角柱)状に縮小・投影し、覗かされているかのようだ……。

「さぁ、振るわよー。覚悟は良いかしらーぁ?

 さぁさぁさぁ!
 早く決断しないと、ベイン・レイブンが、お前の星を啄んでしまうわ!」

 忘れてはならないことがある。
 相手の同意を得た途端に猛威を振るう呪術が、幾つかあることを。
 何故彼女は、貴方のことを占いたいと訴えつつ、さっさと箱を振ってしまわないのだろうか? 「相手が頷くのを待つべきだ」などという気遣いが、どんな言を弄した所で、凶鳥ヴュゾフィアンカにあろうものか!

 勿論、貴方は、こんな不愉快な女は放っておいて、逃走を図ってしまっても良い。
 しかし、己の運気に邪を撥ね除ける程の自信があるならば、彼女の鼻を明かしてやるのも一興だろう。



(確率: 吉5% 末吉10% 凶15% 末凶25% 大凶45%)
 ゾ「末吉は吉より悪いのに、末凶も凶より悪いのよねぇ。変なのー」



(逃走成功率20%)
 
posted by 謡堂 at 10:45| 雑記