2023年09月19日

とか言いつつ語る  1/3

 
◆聞こえの良いことだけ言う輩は信用出来ないという話
 
 さて、プラスチック製品が世に出てきた時、自然分解されない物質を自然界にゴミとして捨てることへの懸念の声はありました。巡り巡って、それは今、海洋マイクロプラスチック汚染の問題になっています。
 報道などで皆さんもよくご存じの通り、原子力発電所に対して、津波による被害や全電源喪失を心配する声はありました。技術的に可能であるにも関わらず(防波堤や、コアキャッチャーに類する静的安全システムなど)、それらへの対策を怠った結果、我々は東日本大震災で、追加の甚大な被害を受けることになりました。

 何が言いたいのかと申しますと、
・技術の問題点を指摘されても、導入して利益を得たい側・得ている側は、それを軽視・無視しがち(指摘を受け入れて導入されなくなったら困るし、対策を講じれば、その分の手間で利益が減るし)。
・指摘されていた問題は、大抵、後で形になる。
・被害を受けるのも、対策に追われるのも、問題を放置していたのとは別の人間達。
 ということです。

 ここまで大げさな事例を挙げずとも、ご家庭におけるペット問題を例に考えるのでもいいです。
・「お母さん、犬、飼いたい!」
・「散歩とかの世話、どんすんの。途中で投げ出さない?」「僕、ちゃんとやるよ!」
・→結局、僕君は途中で投げ出して、世話は全て、お母さんがやることに。彼は、犬を飼い始めた当初だけ、撫でたり散歩させたり楽しんで(利益を得て)、関心を失った後でも継続的に発生する面倒な世話は、お母さんに丸投げです。

 今度は話を矮小化させ過ぎでしょうか? 結局、ミクロでもマクロでも、欲が絡んだ場合に人間のやることは、無責任になるってことです。

 画像生成AIが、もし本当に利益を生んで広がっていくものならば、現在起きている被害や、予想されている悪影響は、今後拡大するなり、予想を超えるなりして、深刻化することでしょう。正直、野放しにされた場合どうなるか、見当も付きません。銃が産まれた時代の人達が、子供が学校で乱射する所までは、想像出来ていたとは考え難いように。
 はたして、いじめの道具になるのか、反社会勢力の資金源になるのか、はたまた、石恵先生とビビッドアーミーの裁判(になるかは現時点では分かりませんが)の結果によっては、他社の看板イラストレーターの絵柄を画像生成AIに学習させて利用し合う、出版社・ゲーム会社間の戦争時代でも到来するのか。
 頼まれもしないのに悪用コンテストをやっている人達がいるからなぁ……。

 話を最初の例に戻しますと、プラスチックの流通や原子力発電の安全対策で、もう少し何らかの手が打たれていれば、後の苦労は大分減っただろうというのは、結果論でしょうか?
 しかし、少なくとも無断学習・盗用AIに関する指摘や、規制方法を始めとする対策案は、現在、数多く出されています。推進者にしても、今よりも大きく社会問題化した後で、知らなかった、想定外だった、と言い訳が出来る状況ではありません(そうかな? ここは日本だ…… orz)。
 将来に禍根を残さない為にも、誕生当時で色々と変更の利く今、検証や対策が行われるべきだと思います。



◆技術の発展には制約も含まれているという話
 
 スマホに撮影機能があるからといって、何でも写真に収めていい訳ではなく、それで道行く女性の歩く姿やスカートの中を撮影したら、盗撮です(法律による使用方法の規制)。ちなみに、これまで取り締まりの根拠になっていた自治体ごとの条例に加え、今は「撮影罪(性的姿態等撮影罪)」も出来ました。「けしからん!」という社会の声に押されて、新しく罪が規定された例でもあります。
 自動車はレーシングカーともなれば時速300kmを優に超えることが出来ますが、そんな速度で町中を走られて激突したり人を撥ねたりされては困るので、普通車は、もっと速度の出ない造りです。そして、道路交通法によって、様々な規則もあれば、道路での制限速度も決まっています(性能の制限+法律による使用方法の規制)。
 日本でアメリカのような銃乱射事件が起き難いのは、銃刀法で厳しく規制されているからです(社会から捨てることは出来ないが、濫用されても困る道具の対応例)。
 ランサムウェアは技術としては凄いのでしょうけれども、日本経済の発展を願ってその製法をばらまく輩がいたら、ウィルス罪(不正指令電磁的記録に関する罪)で配布者も使用者も逮捕されることでしょう(技術その物が「悪」と見做されている例)。

 事程左様(ことほどさよう)に、技術や道具という物は、研究室・開発室から出た時点で、もう好き勝手に振る舞うことは出来ないものなのです。
 その存在は宝石だったとしても、社会に害を与えないように適切な制約(宝石のカット)を受け入れたり、適応した形に変化したりしなければ、安定した環境を手に入れて、より輝き発達することは、出来ないのではないかと思います。
 将来、画像生成AI(もしくは、無断学習盗用生成AI)が、既存の技術・道具のどこら辺と同列に扱われていくかは分かりません。しかし、「つまらない規制で技術の発展を阻害するな」というご意見の方は、「急がば回れ」という言葉も心に留めておいて頂ければと思います。
 分野こそ違いますが、(人間の手による)官能関係作品という宝石も、R18マークを付けたり、売り場を一般作品と分けたり(ゾーニング)して社会へ恭順の意を示しているからこそ、存在を許されている訳ですし。
 もっと卑近な例を挙げるなら、もしも自動運転の技術が歩行者への安全対策を行っておらず、「だが、これを使わないと流通問題を解決出来ず、諸外国に経済競争で負ける」と強弁したとして、はたして日本社会から受け入れられるのかどうか、考えてみて下さい。

 ……と、説得するようなことを書いてはみたものの、強めな所で「クリーンなデータで1から学習のし直し」「児ポもどき・フェイクポルノを生成できないように、二次元三次元を問わぬアダルト表現の生成能力のオミット」「権利侵害を起こさないようにLoRAの読み込み不可」辺りを要求された場合、何が残るんだって気はします。「こういう方法でこういう物を開発できた」「世に出したら、こういうことが起きた」という記録以外に。同情では無いです。「需要の傾向を鑑みるに、やっぱりこれはランサムウェアの仲間なんじゃないのか?」という懐疑の念です。
 いっそフェイク画像・嫌がらせ関連の機能を高めて軍用(?)の道へでも進めば、技術への制限は限りなく0に近づくと思いますが、どのみち民間人がおいそれと使える物ではなくなりますね。
 
posted by 謡堂 at 03:13| 雑記