2008年10月06日

百物語・脂足2 /マーニッド五世 (魔が堕ちる夜)

 
 よくある笑い話に、「夫の陰毛」という物がございますな。奥様方のなさるお話で、掃除をしているとあそこの縮れ毛が思いも寄らぬ場所から見つかるという物ですじゃ。
 例えば、壁掛け時計の頭、窓のサッシの表側。悪い時には……冷蔵庫のチルドの中などにも。その時のお決まりの台詞が、「アレって一人でふわふわ飛んでどこかに行っちゃうのかしらねぇ?」ですぞ。覚えておくと、吹き出すタイミングを合わせて良い雰囲気になれるやもしれませんな。

 さて。
 この前、小僧んちに出向いた折に、しっぽりやったご近所の奥様から聞いた話ですじゃ。

「うちの旦那、脂足でやんなっちゃう。帰ってきて裸足で歩き回るから、フローリングの床のあちこちに足跡がべっとりと付くのよ? 酷い時には天井にまで」

 ……人の身体の届かない場所に痕跡を残して喜ぶという霊の悪戯も、大いなる夫婦の営みの前には付けいる隙が無いようですな。
 ヘイ、マダム。おそらく天井のは別人の足跡でございますぞ。
 流石に、陰毛と同じ訳にはいきますまい。


※補足
 小僧=茜
 
posted by 謡堂 at 18:49| ◆聊枕百物語