2009年11月30日
百物語・のっぺらぼう /パルセイズ (半龍神のきっついお嬢)
あたしが人間の振りして寺子屋に通っていた頃の話よ。
用事があって、夕暮れの山道を歩いていたのよね。
そしたら、のっぺらぼうに出逢っちゃった。
大抵の妖怪のやることなんて、変質者とそう違わないわ。
最初、道の真ん中に腹掛け姿の飛脚が、両手で顔を覆って突っ立っててさ。「何かなー」と思いながら近づいてったら、すれ違い様にベロベロバー! 指を広げて、のっぺら面をぐいぐい、横合いからこっちに押しつけてくる訳。
嗤っちゃうわよね。こちとら、道を急いでんのよ。
生っちろい顔を鷲掴みにして、電撃ぃ撃ち込んで焼いてやったわ。ハン!
最近じゃあ、アイアンクローって言うの? あれよ。
そいつの顔って白玉みたいな感触でさ。指が第一関節まで食い込むの。ハリセンボンの棘を柔らかくしたような、大根のヒゲ状の物もちょこちょこと生えていて、曲げた指の付け根に当たって少しくすぐったかったっけ。
そしてそこから、バチバチバチィッ! ってね?
いたいけな少女様をからかおうなんざ、太ぇ奴。弾かれたように仰け反って、ひっくり返ったかと思うと四つん這いで逃げてっちゃって。いい気味だった!
んで、後日。同じ山道を昼に通りかかった時。
傍の茂みで、雄の狸が股座をこんがり焼け焦がせて死んでいたわ。
両腕で、ふぐりのあったらしい位置を押さえて。
洗ったわ。近くの小川に駆け込んで、皮が摩り切れるかってくらい手を洗ったわ……。
……っンの○○。どこを使って、のっぺらぼうに化けてた訳よ。
posted by 謡堂 at 12:45| ◆聊枕百物語