2010年06月30日

百物語 畏施火 (いせび) /話の採集者:追放刑の常連者

 
 ある晩に。軒先へふらりと漂う、鬱金色の火の玉。
 何処からやって来るのか、何を考えているのか、妖でさえ全く知らない。
 心せよ。それは、ただただ、皆が忘れた頃に現れる。
 人の住まいにも、森の獣の巣穴にも。
 木と紙だけが、まるで待ち焦がれていたかのように、受け入れる。
 紅蓮の舌に舐められる我が家を前に、民草は炎の恐ろしさを思い出す。



 お生憎様。
 この風来坊のパルセイズ様には、焼かれて困る家も、蔵に溜めた財宝も、
 死なれて困る友達だって、ありやしないわ。
 火なんて稲妻の付随物、侮りすらも抱けない。
 
posted by 謡堂 at 22:11| ◆聊枕百物語